白鳥内科医院

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医院の概要

〒430-0814
静岡県浜松市恩地町192
電話:053-427-0007
Fax:053-427-0005

主な診療内容
頭痛外来・小児頭痛
(6歳以上の小児を含む)
認知症(物忘れ)外来
パーキンソン病とその類縁疾患

診療時間
○月・火・金
9:00〜11:00
15:30〜17:30
○土・日・祝
9:00〜11:00

休診日
○水・木休診
 (水・木は、祝日でも休診)
計画休診は お知らせ をご覧ください。おおむね1〜3か月先まで、表示してあります。

待ち時間を短くしたい方には、午後4時半から5時(月火金)の受診をお勧めします。
この場合は、平均的な待ち時間は30分程度のことが多いようです。計画休診は、 お知らせ をご確認ください。

当院の総合サイトは
脳検査・治療センター
白鳥内科医院

ドクター白鳥の頭痛相談室

その11 難治性片頭痛患者をどのように治療するか

〜2012年神経学会学術大会から〜

神奈川歯科大学附属横浜クリニック内科五十嵐久佳。

要旨

頭痛日数の多い患者では、発作としての性状がはっきりとしなくなり、緊張型頭痛との区別が困難になったり、薬剤の服用タイミングがわからず、急性期治療では充分な効果が得られなくなるケースも多い。このようなケースは片頭痛の慢性化した状態、すなわち「慢性片頭痛」と捉えられている。また慢性片頭痛は薬物乱用状態にあることが多いため、「薬物乱用頭痛」との明確な区別は付けがたいのが現状である。片頭痛の慢性化には性差(女性)、薬物乱用、過剰のストレス、うつなどが深く関与している。片頭痛の慢性化を予防・治療するためには頭痛ダイアリーなどを用いて頭痛頻度、薬物使用状況を把握、患者への説明、ストレスマネージメントや体操などの指導、併存症を考慮した適切な予防薬の投与が重要である。もちろん、睡眠時無呼吸や、髄液漏出が併存していないか、疑うことも大切。

1.急性期治療薬の効果が少ないと訴える患者

1)服用タイミングの確認

片頭痛の急性期治療薬としては非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)、トリプタンが使用されている。頭痛を主訴に受診する患者は市販薬が無効、トリプタンの効果が少ないと訴えることも多い。NSAIDs、トリプタンいずれも片頭痛発作早期に使用しなければ効果が少ないため、急性期治療薬が効かないと訴える患者には、そもそも片頭痛発作時に使用したか、発作のどのタイミングで使用したかなど、適切に使用したか否かを確認する必要がある。また、月経時周辺に起こる片頭痛発作は他の時期に起こる発作に比し重症度が高いことが多いことから、頭痛ダイアリーなどを用いて、片頭痛発作の起こる時期を確認することも重要。

2)どのトリプタンを選ぶか

OTCが無効となり外来を受診した患者には急性期治療薬としてトリプタンが選択される。本邦では5種類の経口トリプタンとスマトリプタンの点鼻液、注射薬が使用可能である。これらのうち、最も効果の速いのはスマトリプタン注射薬であり、頭痛が急激に悪化する場合や嘔吐を伴う場合にはよい適応となる。スマトリプタン点鼻液も経口薬に比し効果が速いため、朝痛みで目が覚める患者や、トリプタン経口薬の効果が少ない患者には試す価値がある。

経口薬のなかでは最高血中濃度到達時間(Tmax)の最も短いものはリザトリプタン(マクサルト)、半減期(T1/2)の長いものはナラトリプタン(アマージ)である。これらの薬物動態と各患者の片頭痛発作の状況から薬剤を選択する。また、患者によっては外出するときにはマクサルト、月経中でいつもより持続時間が長い頭痛が起こる場合にはアマージ、と使い分けが可能である。

トリプタンは患者によって嗜好が異なるため、その患者にとってどのトリプタンが最も効果が優れ、副作用が少ないかを確認する。

3)早めに服用してもトリプタンの効果が少ない

トリプタンだけでは充分な効果が得られない場合にはNSAIDsを併用する。NSAIDsを選ぶ場合も薬物動態を考慮する。すなわち、Tmaxの短いマクサルトを使用する場合は、T1/2の長いNSAIDs(ナイキサン)、比較的Tmaxの長いアマージを使用する場合はTmaxの短いNSAIDs(ロキソニン)を併用することにより、速い効き目と、頭痛の再燃の予防が期待できる。また、片頭痛発作中には胃の運動が停滞しているため、制吐薬(ナウゼリン)の併用することにより、片頭痛治療薬の吸収を早めることと、片頭痛発作に伴う悪心・嘔吐を予防できる可能性がある。

当院でもナイキサンは、試しに使ってみようかと思います。当院では、NSAIDsとトリプタンの順番は逆で、NSAIDs無効時にトリプタンを使用しています。どちらが先でも、印象としては、効果に差がないと思われます。したがって、価格の安いNSAIDsを先に使用することを推奨しています。

2.月経周辺に強い頭痛が集中する

女性片頭痛患者の約半数は月経周辺に片頭痛発作が起こる。この時期に起こる頭痛の多くは前兆のない片頭痛で、他の時期の発作に比し、痛みが強い、持続時間が長い、急性期頓挫薬の効果が少ない、など、重症度が高いことが多い。頭痛ダイアリーなどにより、片頭痛発作の起こる時期を確認し、常に月経時に頭痛が頻回に起こることが確認できれば、5〜6日間、アマージ0.5錠を1日2回服用する、などの短期予防療法が有効である。

これは、最近当院でも、試したいと思っている点です。

3.妊娠・授乳中に強い片頭痛発作がある

前兆のない片頭痛患者の60〜70%は妊娠中には発作が軽減・もしくは消失することが報告されているが、中には妊娠中に頭痛が悪化したり、初発する例もある。特に前兆のある片頭痛は前兆のない片頭痛に比べて妊娠中にも発作が改善しない例が多い。

妊娠・授乳中の妊娠悪阻の時期には食事が充分に取れないこともあり、頭痛発作が頻発する患者もいる。この時期は薬剤絶対過敏期(妊娠4週〜7週末)・相対過敏期(妊娠8週〜15週末)に相当するため、薬剤使用は必要最小限とすることが望ましい。

妊娠中の女性への助言

  • 妊娠と気づかず痛み止めやトリプタンを飲んだことがあったとしてもほとんどの場合、心配なし
  • 妊娠第2期以降は多くの場合、片頭痛が起こりにくくなる
  • つわりの時期に一時的に頭痛が悪化することがあるが、そのときは小量頻回に炭水化物をとり、水分もよく補給しよう
  • 頭痛が起こったら、無理をせず、ゆっくり休もう
  • 妊娠中であっても、絶対薬を飲んではいけないわけではない

授乳婦への助言

  • 生活上の注意
  • 日頃からストレッチをして肩こりを防ぐ
  • 頭痛が起きたら家事を中断し安静
  • 完璧を求めない
  • 無理をせず、家族の協力を求める
  • 急性期治療薬
  • 薬剤は母乳中に移行するが量的には極めて少ない
  • 薬を飲むからといって授乳をあきらめる必要はない
  • 授乳してから服薬すればより安全
  • 搾乳しておけば、いざというときいつでも服薬可能
  • 第一選択はアセトアミノフェン
  • 効果なければNSAIDs使用可
  • 強い発作があればトリプタン使用可(皮下注射もできる)

NSAIDsではイブの安全性が高いといわれているが、妊娠末期には胎児の動脈管収縮を生じる可能性があるためNSAIDsは使用しない。妊娠初期でのトリプタンの使用については多数のデータの集積があり、発作が重度でアセトアミノフェン(カロナール)の効果が乏しい場合には選択される。

片頭痛発作時に悪心・嘔吐を伴う患者は多いが、添付文書ではナウゼリンは妊娠中禁忌となっている。プリンペランは妊娠悪阻に使用されており、妊娠中の使用は特に問題ないとされている。発作が頻回の場合はリラクゼーション、バイオフィードバック、鍼治療などの非薬物療法を検討する。妊娠中には予防薬は使用しないのが原則。

授乳中の急性期治療薬の第一選択は妊娠中と同様にカロナールである。イブプロフェンは添付文書では母乳中への移行があるため授乳中止または回避となっているが、イブ、ナイキサンは国立成育医療研究センターでは「科学的な情報をもとに評価を行い、授乳期でも安全に使用できると考えられる薬」とされている。月に数回程度の使用であれば危険性はきわめて少ないと考えられる。アスピリンは児の代謝性アシドーシスの報告があり、妊娠後期〜新生児への授乳中は避ける。

トリプタン使用については添付文書ではゾルミトリプタン(ゾーミック)、エレトリプタン(レルパックス)、マクサルト、アマージのいずれも授乳回避であり、スマトリプタン(イミグラン)のみが投与後12時間は授乳回避となっている。イミグランの皮下注射のデータでは投与後8時間で母乳への移行はほとんど消失しており、授乳期に安全に使用できると考えられる。また、「薬剤と母乳第14版」の薬剤リスク分類ではレルパックスが母乳への移行が少ないとの報告があり比較的安全、その他のトリプタンは安全性は中等度、に分類されている。

これらのことから、重度の片頭痛発作がある患者には授乳との間隔をあければトリプタンは安全に使用できること、薬物を使用する場合は、薬物使用前に搾乳しておけば、いつでも母乳を与えることができることなどを患者に説明する。片頭痛急性期治療薬を使用するために母乳を与えることを禁止するような指導は母と児の双方にとって利益にならない。

4.頭痛日数が多く、急性期治療薬を頻繁に服用している

一般に、片頭痛発作が急性期治療薬のみでは充分な効果が得られない場合、または急性期治療薬を頻回に使用している場合には予防薬の投与が必要となる。エビデンスの質が高い薬剤はバルプロ酸(デパケン)、プロプラノロール(インデラル・保険適用外)、アミトリプチリン(トリプタノール・保険適用外)、トピラマート(トピナ・保険適用外)である。ロメリジン(テラナス)は日本でのみ使用されている薬剤でエビデンスの質はやや劣るものの、片頭痛治療薬として保険適用がある。

予防薬は2ヵ月ほど使用しなければ効果がでないことが多いことを患者に説明することが、dropoutを防ぐために重要である。

1)デパケン

デパケンは2011年に本邦においても保険適用となった。(いまだにご存じない先生が多く、苦労している。せめて精神科のDrは勉強していただきたい)デパケンは、1000mg/日を超えると催奇形率が高くなり、胎児の認知機能に影響を及ぼすことが報告されており、妊娠可能年齢の女性患者に投与する場合には注意が必要である。片頭痛には低用量で効果が認められるため、日本頭痛学会では400〜600mg/日を推奨用量としており、血中濃度がゆるやかに上昇する徐放錠Rの投与を勧めている。

2)インデラル

不安感が強い患者や高血圧、頻脈を伴う患者にはよい適応となる。20〜60mg/日が推奨されている。気管支喘息のある患者には禁忌であり、またマクサルトとは併用ができない。血圧が低めの患者に使用する場合には、立ちくらみなどの発現に注意する。

3)トリプタノール

緊張型頭痛、抑うつ状態を伴う患者に使用することが多い。眠気、口渇感などの副作用がみられるため、1日5〜10mg(就寝前または夕食後の投与)から開始する。推奨用量は10〜60mg/日である。

4)テラナス・ミグシス

10〜20mg/日投与する。副作用が少なく安価であり、保険適用がある。

5)トピナ

欧米では評価の高い薬剤であるが、本邦では片頭痛治療薬としての保険適用はない。50〜100mg/日使用する。慢性片頭痛にも有効性が高いとの報告がなされている。四肢の感覚異常、体重減少、精神症状などの副作用があるため、使用する場合は患者に充分な説明が必要である。

6)その他

アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)のカンデサルタン(ブロプレス)8mg/日、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のリシノプリル(ゼストリル・ロンゲス)5〜20mg/日、呉茱萸湯7.5g/日などの有効性が報告されている。ARB、ACE阻害薬は高血圧を合併する患者にはよい適応となる。

5.慢性片頭痛?それとも薬物乱用頭痛?

国際頭痛分類第2版(The International Classification of Headache Disorders; 2ndEdition)によれば、慢性片頭痛は「1.5片頭痛の合併症」に分類されており、大部分の慢性片頭痛は「1.1前兆のない片頭痛」として始まり、慢性化するに伴い、頭痛発現の発作性が顕著でなくなる傾向がある、とコメントされている。

2006年に、慢性片頭痛と薬物乱用頭痛の付録診断基準が追加され「慢性片頭痛」は頭痛が月に15日以上あることが条件であるが、そのすべてが片頭痛の特徴を示さなくても、片頭痛の特徴を示す頭痛あるいはトリプタンが有効な頭痛が月に8日以上あれば、慢性片頭痛と診断でき、薬物乱用のないことが条件である。

一方、月に10日以上トリプタンを使用していれば薬物乱用頭痛となり、慢性片頭痛と薬物乱用頭痛は病態的にも深い関わりがある。すなわち、片頭痛の慢性化をきたす最も多い原因は薬物乱用であり、薬物乱用頭痛の70%以上はもとの頭痛は片頭痛である。

1)慢性片頭痛の治療

片頭痛が慢性化した患者にはまず食事、睡眠、運動など規則正しい生活を指導する。カフェインの過量摂取は頭痛悪化の一因となりうるため、コーヒーなどの飲みすぎを控えるよう伝える。慢性片頭痛患者では頸・肩の痛み・凝りを伴う患者が多いためストレッチを指導する。バイオフィードバックやストレスマネージメントも重要である。

薬物療法として有効性が高いといわれているものはトピナとA型ボツリヌス毒素(ボトックス)であるが、いずれも保険適用はない。他にはデパケン、トリプタノールの有効性が報告されている。

2)薬物乱用頭痛の治療

薬物乱用状態にある患者では原因薬物の中止を勧めるが、原因薬物中止後1〜2週間は反兆頭痛により状態が悪化し、日常生活に多大な支障をきたすこともあり、原因薬物中止の時期は患者と相談して決めることも治療中断を防ぐ。説明のみで薬物乱用頭痛が改善したとの報告もあり、患者指導は重要な意味を持つ。薬物乱用状態にある患者は薬物への依存傾向があり、原因薬物中止による不安感もあるため、予防薬を投与する。もとの頭痛が片頭痛であることが多いため、デパケン、トリプタ、インデラル、トピナなどが使用される。

反兆頭痛のレスキューとしては効果持続の長いナプロキセン、COX2遮断薬、テルネリンの併用療法の効果が報告されている。強い片頭痛発作がみられる患者では、スマトリプタン自己注射を1週間に2回まで許可することも患者の日常生活支障度を改善する。(これに関しては、当院では即時中止をファーストチョイスにしています。薬物乱用で頭痛外来に受診する方は、「すでに機が熟している」ことが多いからです。)

薬物乱用頭痛の約70%は改善するが、一方、離脱治療後の再発率は1年で41%であり、離脱後も、頭痛ダイアリーなどを用いた定期的な薬物摂取の状況の確認、患者教育が必要である。つまり、簡単にクリニックと縁を切らない方がベネフィットが多い、ということですね。安易な道はいい道ではない、ことが多いのは事実です。いい状態を維持しているからこそ「1年間は定期的に通院してね」、というのが当院のスタンス。

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