白鳥内科医院

頭痛問診表

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その他のお悩み

医院の概要

〒430-0814
静岡県浜松市恩地町192
電話:053-427-0007
Fax:053-427-0005

主な診療内容
頭痛外来・小児頭痛
(6歳以上の小児を含む)
認知症(物忘れ)外来
パーキンソン病とその類縁疾患

診療時間
○月・火・金
9:00〜11:00
15:30〜17:30
○土・日・祝
9:00〜11:00

休診日
○水・木休診
 (水・木は、祝日でも休診)
計画休診は お知らせ をご覧ください。おおむね1〜3か月先まで、表示してあります。

待ち時間を短くしたい方には、午後4時半から5時(月火金)の受診をお勧めします。
この場合は、平均的な待ち時間は30分程度のことが多いようです。計画休診は、 お知らせ をご確認ください。

当院の総合サイトは
脳検査・治療センター
白鳥内科医院

ドクター白鳥の頭痛相談室

ドクター白鳥の頭痛相談室(その14)

第40回日本頭痛学会総会のまとめ

0日目

第40回日本頭痛学会総会のまとめ(0日目)

今年最後の学会出張は、頭痛学会です。
疲れがたまっていますが、東京前泊で、レオヌッチのリサイタルを楽しみました。

今世紀最高のヴェルディ、バリトン歌い手。すでに70才。
デヴュ45周年。
そして来年はヴェルディ生誕200年。

観客は、プロ、セミプロ級の方が多く、プログラムと同じ位歌ってくれたアンコールでは、イタリア語で歌う観客と大合唱。すごかったです。

アーもちろん私は歌えません。残念。

学会のまとめ。

数年前は、片頭痛を診断できるようになりましょう、昨年は、慢性化した難治例のマネージメント、今年は、実はまれとは言えない二次性頭痛を正しく診断しましょう、とうのがテーマ。

例によって、私なりの解釈ですので、原則的に講師のお名前など記載しません。文責は私にあります。

11月15日学会前日The 40th 記念セミナー

I. ランチョンセミナー「片頭痛の痛みとはなにか―最新の話題とこれから」

(1)ストレス、女性ホルモン、天気、空腹、臭い(香水)などが片頭痛のきっかけになる。
特に日本人は、臭い過敏が多いようだ。
日本人では63%、海外では25〜40%。

(2)それに基づいて、片頭痛スクリーナーが作成された。すぐれものだ。

(3)前兆をともなう片頭痛の発症、一峰性。
片頭痛を伴わない前兆の発症、二峰性。

(4)三叉神経血管説。
血管説の復権。なぜなら、側頭動脈押さえると改善するから。

(5)イミグランのジェネリクスが出る。
マイランもその中の一つ。

(6)痛みの分類
・急性/慢性
・侵害受容性疼痛片頭痛
・神経障害性疼痛帯状疱疹、アロディニア→中枢性感作→肩も痛む
・心因性
dopa下行系の抑制・障害が片頭痛ではある
なぜなら16%にむずむず脚症候群がともなうから。

(7)新規薬
cGRP受容体拮抗薬。 肝機能障害で日本での治験は進んでいない
ボツリヌス毒素。 慢性片頭痛に効果あり
NSAID(ナイキサン)+トリプタン 特に生理の時
Zeltrix
LEVADEX
5HT-1F agonist

(8)慢性連日性頭痛の多くは薬物乱用頭痛
片頭痛とうつは互いのリスクファクター。これにはうつ病の部分症状として頭痛が現れる場合や、頭痛によって二次的にうつが生じる場合、同一患者にうつと頭痛が共存する場合などが考えられる。特に片頭痛は3つ目の共存症としての報告が多い。これらが共存する理由として、痛覚伝達とその受容経路が感作されることにより過去の痛覚刺激経験記憶が変容して最終的にうつに至るLimbically augmented pain syndrome(LAPS)やドーパミンD2受容体遺伝子型との関連などが考えられている。また片頭痛から薬物乱用頭痛に進行するメカニズムとして、セロトニンやドーパミンの関連も報告されている。薬物乱用頭痛患者ではうつ病を有している患者割合が58.2%と片頭痛患者の2.5%より高いことも示されている。

(9)難治性片頭痛Refractory migrane
片頭痛発作時には三叉神経血管系の神経原性炎症と中枢の感作現象がおこっている。片頭痛の慢性化とは,急性発作時におこっている炎症と感作現象が慢性化したものであると考えられている。神経原性炎症は三叉神経血管系の過敏性をもたらす。神経細胞が反復性に活性化し,三叉神経尾側核の侵害受容神経に生物学的・機能的な変化を惹起し,神経の発射域値が低下し,受容野が拡大すると考えられている。神経感作現象は臨床的には皮膚アロディニアの出現と相関しており、CMやMOHで出現頻度が高い。慢性化のリスクファクター。
前頭葉、帯状回が活性化されている。
損害回避の高いこととの関連。

* 参考「損害回避」。損害回避が高い人は、「石橋をたたいて渡る」と言う言葉に代表される慎重で堅実ですが、緊張しやすく、先のことを思いわずらう傾向があり、ものの見方が悲観的で、うつ病に非常になりやすいタイプ。逆に、損害回避が低い人は、楽観的で、警戒心がなさ過ぎて失敗することもありますが、非常にうつ病になりにくいタイプです。もっと言うと、あまりにも楽観的過ぎて、周りの人が気をもみ、周りの人にストレスを与える可能性があります。
このうつ病になりやすいタイプの人が、うつ病にならないように、性格を変えようとすることは、逆に、ストレスになります。自分の性格を理解し肯定したうえで、ストレスから逃げる方法を見つけるのが現実的。

フロアーから。

  • 前兆だけで片頭痛がないものは、どう治療しているか?
    はっきりしない。脳卒中のリスクがあるのかは検討中。間中D、ロメリジン一時的に使用している。

II. トリプタン治療の意義頭痛外来の役割

  • まずはクモ膜下出血の診断。CTで、(1)シルビウス裂の左右差のみ、(2)中隔にそってうっすら出血しているだけのタイプは見逃しやすい。
  • 次はクモ膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎を診断。
  • 問診から、頭痛を一次、二次に。
    90%以上は一次。
    二次性は、頭蓋外疾患を含む、たとえば緑内障、副鼻腔炎、咬合不全(顎関節症)
  • 2010年度の頭痛新患者片頭痛70%、緊張型40%(重複あり)、薬物乱用頭痛10%、群発頭痛3%だった。
  • スマトリプタン 血管障害がある時は禁忌。
    使用後の感想、「良かった」以上が90%。
  • 薬物乱用頭痛、市販薬によるものは50%でしかなかった。あとは医療機関の薬。

III. 頭痛の達人養成塾

●事例検討

片頭痛と妊娠、出産
32F。
妊娠の可能性あれば、非薬物療法、胎児に影響少ない薬物を。
なければ、デパケン、万一に備えるなら、葉酸を服用してもらう。
ある日突然妊娠、ということもあるから。4〜8週が一番危険な時期。
・妊娠中は頭痛の頻度が減ることおおい。
屯用、アセトアミノフェン、イブプロフェン+トリプタン
予防薬、βブロッカー、少量のトリプタン(日本では使わないことおおい)

薬物乱用頭痛
29F 1年前からOTC毎日服用。SRQ-D(http://www.japc.or.jp/utsu/SRQtable.html
20点。 トリプタノール、ミグシス・テラナスで頭痛のない日が増えた。
薬物乱用頭痛の90%にうつ病が伴うというデータも。

持続性片側性頭痛
40F、事務職。
もともと片頭痛と緊張型頭痛。
8月から、左側頭部から頭頂部にかけぴりぴりする痛み。涙も出る。受診。
入院して調べたところ、時間帯に関係なく、痛みの程度は変化。涙も並行。
カフェルゴットと100%O2無効。インドメサシン有効。
診断は持続性片側性頭痛。
解説:持続性で、必ず片側性に起こり、インドメタシンが有効な頭痛
診断基準:
A. B-Dを満たす頭痛が3ヵ月を超えて続く
B. 次の特徴をすべて満たす
1. 痛みは片側性で、反対側に移動しない
2. 毎日連続してみられ、痛みが消失する時期がない
3. 程度は中等度であるが、増悪して重度の痛みとなることもある
C. 頭痛増悪時、頭痛側に次の自律神経所見のうち少なくとも1項目がみられる
1. 結膜充血 または 流涙 (あるいはその両方)
2. 鼻閉 または 鼻漏 (あるいはその両方)
3. 眼瞼下垂 または 縮瞳 (あるいはその両方)
D. 治療量のインドメタシンで完全寛解する
E. その他の疾患によらない
Sjaastad の命名
頭痛は厳密に片側性
持続性
中等度以上の痛み
毎日持続
indometacin に劇的に反応
TACとの関連。

フロアとの討論
薬物乱用頭痛の30%は改善しない。トリプタノールは(1)睡眠障害の改善(2)下降抑制系の補強、という機序。最高で60mgまで使用。抗うつ剤としての利用と量が違う。吸収の悪い人もいて、20mgくらいは試す必要がある。(当院では5mgから開始している)

●間中先生の講演

  • なんにせよ問診を上手にすること。患者さんはうまく話せない人が多い。病人は言葉を失う。
  • 慢性頭痛とは、素因性・発作性・過敏性にもとづくものだ。
    (参考「ポケモン騒動」の中心にあるできごとは、「光過敏性素因児におこった発作」ということでしょう。となると、てんかんに似た点があるんだな、と思う)
  • 頭痛は仮面ダンサーのようなもの。
    複数の頭痛を持つ人が多いし、大小さまざま、さまざまな症状、ライフサイクルでの変化。
  • 起こるスピードの違いも大切
  • 片頭痛と緊張型実は鑑別困難なことも
    しかし、過敏性、頭を振ると痛いのは、片頭痛。
  • 片頭痛なぜずきずきしないのか?
    細い血管は、非拍動性、太いのは拍動性、と言われていたが。静脈も拍動しないし。
  • 拍動痛、も実は脈拍と一致するわけではない。
  • 片頭痛は、天気に例えれば雨、小雨もあるけど。緊張型は曇り。
  • Cady先生は、頭痛は、どこに行きつくかわからない、と言っている。
    少しなら緊張型頭痛、もう少し行くと軽い片頭痛、そして片頭痛。
  • つまりミステリーバスなのだ。
    片頭痛行ウサギ型
    緊張型行
    緊張型様から片頭痛行カメ型
  • 肩こりと首こりを区別しよう
    頸部痛 C2〜3
    肩痛 C4
  • 頸部痛は、片頭痛の方が強いというデータ有。緊張型ではかえって弱い。
    三叉神経と頸部神経節は、三叉神経脊髄路の尾側亜核で収束するから。
    http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/basic-trigem.html#caudalis
  • 頭痛の問診
    「あなたは頭痛もちだと思っていますか?」
    「来院理由は?」
    (当院では、後者は必ず聞くけど、前者は、聞かなくても、そう思っていない人もいます)
  • 光・音過敏をひろい出す
    明るい部屋・暗い部屋の絵を見せるといい。
    たしかにこれは有効かも。
    初診でわたすチェッククリストではほとんど拾えないので、当院では「明るいところと暗いところとどちらがいい?」と聞きます。
    同様に、行動での過敏性を拾うには、「走り回るのと寝ているのではどちらがいいですか?」と。そうでないと、「寝こんだりしないで仕事しますから」とか、関係ないことを言い出す方が多いです。
    同様に音過敏は、「ロックコンサートや子供の叫び声と、静かなところでは?」という質問。
    ここまで言わないと正解が出ないのは、私見だが、頭痛患者さんは思い込みの強い方が多いから(認知のゆがみがある)と考えています。間中先生はそれを「病人は言葉を失う」と表現しているのだろう)
  • 前兆と光過敏の違い
    前兆アウラは、原則的に拡延する。広がる。
    絵に描いてもらうのも有効。
    (持続時間の確認も大切かなと思う)
  • 赤信号頭痛の除外
    SNOOP
  • 問診のこつ
    アイコンタクト、声掛け、大切
    「どこが痛い?」指さしてもらう。「頭痛もちでしたか?」
    「時々ですか?ずっとですか?」
    「いつごろから?」
    急性の時は「思い当たることは?」
    (これらは自然にやってるなあ)
  • アイコンタクト目の力起承転結
  • VASヴィジュアル・スケールを使う
  • 慢性連日性頭痛
    「月の半分以上服薬していませんか?」
    MOH・ストレス・うつ・身体表現性障害
  • 小児の頭痛非典型的
    朝から、両側、非拍動性、前頭部
    鑑別(1)もやもや(過呼吸で失神) (2)起立性調節障害 (3)低髄液圧症候群
  • 最後に
    病歴と診察が大切!
    参考 Tierney先生は、鑑別診断を説明するときに、いつも以下のカテゴリーを使います。
    Vascular(血管性疾患)、Infection(感染症)、Neoplastic(腫瘍性疾患)、Collagen(自己免疫疾患)、Toxic/Metabolic(中毒/代謝性疾患)、Trauma/Degenerative(外傷/変性疾患)、Congenital(先天性疾患)、Iatrogenic(医原性疾患)、Idiopathic(特発性疾患)。

1日目

I.特別企画1 新しい慢性頭痛の診療ガイドライン:公開直前討論

■単一遺伝子による片頭痛

家族性片頭痛は、1〜3までだったが5まで増える。
CADASIL,MELAS,Osler-Rendu-Weber 症候群は従来同様。

■クモ膜下出血

CT MRIならFLAIR。雷鳴様頭痛なら、腰椎穿刺必要。
4日経過するとCTでは陰性に。
2割は診断されず、1割は受診しても。

■小児頭痛

イブ、カロナールが標準。
イミグラン点鼻、マクサルト(リザトリプタン)、ゾーミッグ。
予防薬は、トピナ、ペリアクチン(シプロヘプタジン)

■疼痛とは?

三叉神経血管系、下降性疼痛抑制系、ペプタイド
CSD→神経原性炎症
※参考 http://www.eisai.jp/medical/products/maxalt/guidance/patient.html
三叉神経血管説 片頭痛の原因として有力視されている説。

まず、血小板からセロトニンが放出されて脳血管の収縮が起り、脳血流が低下して閃輝暗点などの前兆症状が発現します。

また、引き続き起るセロトニンの枯渇状態により脳血管が拡張し、脳の大きな血管や脳を覆う硬膜などの血管周囲に分布している三叉神経が刺激されて神経原性炎症が起き、痛みを感じるという説が三叉神経血管説。

三叉神経の末端からは、刺激によりCGRPカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの血管作動性ペプチドが放出されます。

また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドは、血小板や肥満細胞を活性化して炎症性物質を血管周囲に放出し、放出された炎症性物質によって痛みが引き起こるといわれています。

セロトニン受容体には、セロトニン1〜セロトニン7の7種類あります。

セロトニン1受容体とセロトニン2受容体は、脳血管の収縮に関連していますが、脳血管にはセロトニン1受容体が多く存在しています。

また、セロトニン1受容体のサブタイプの存在が明らかになり、サブタイプのうち、セロトニン1Bとセロトニン1Dの受容体が脳血管の収縮に関連しているといわれています。

さらに、三叉神経末端には、セロトニン1D受容体が存在し、セロトニン1D受容体とセロトニンとの結合により、カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの血管作動性ペプチドの放出が抑制されることがわかっています。

■予後

片頭痛の3%は慢性化。
肥満、SAS/いびき、ストレス、顎関節症は、変更(治療)可能な因子。

■脳卒中との関連 危険因子として

前兆を伴う片頭痛MA 45歳未満の女性。テント下でMRIにて虚血が多い。
前兆がなければ変わらない。
喫煙・ピル服用で危険が増える。
相対危険度 MA+喫煙で9.03 MA+ピルで7.02。

■片頭痛治療・薬物乱用頭痛

・ピル MAでは禁忌
海外でも同様
ただし、5年間前兆なく、35歳未満なら、相対的に使用可能。
若年女性のCVDは5-10/10万人。

・複数のトリプタン使い分け
効きだすまでの時間と、持続時間で。
参考 http://pipisuke.blog109.fc2.com/blog-entry-42.html
タイミング 軽いうち・1時間以内、前兆で使ってもいいが、早すぎると逆に効かない

・そのほかの急性期治療薬
デキサメタゾンv

・インデラル(プロプラノロール)
妊娠でも安全。20〜60mg/日。
マクサルトとは併用禁忌、気管支喘息で禁忌。
2012年8月から公知申請で使用可能。
小児ではだめ。

・デパケン
低用量でだめなら増やしても効かない。600mgまで。
妊娠の可能性があれば使わない。
(インデラルが使用可能になったことから、当院でも今後は使用頻度が減りそうです)

・薬物乱用頭痛MOH

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*参考 薬物乱用頭痛 の改訂基準
付録  A8.2 薬物乱用頭痛の診断基準
A 頭痛は1ヵ月に15日以上存在する。
B 8.2 のサブフォームで規定される 1種類以上の急性期・対症的治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
1. 3ヵ月以上の期間、定期的に1ヵ月10日以上エルゴタミン、トリプタン、オピオイド、または複合鎮痛薬を使用している。
2. 単一成分の鎮痛薬、あるいは、単一では乱用には該当しないエルゴタミン、トリプタン、オピオイドのいずれかの組み合わせで合計月に15日以上の頻度で3ヵ月を超えて使用している。
C 頭痛は薬物乱用により発現したか,著明に悪化している


頻度 1〜2%有病率。
女性が70%。
頭痛外来では30〜50%以上。
説明、助言が有効。
即時中止の方が、再発率が低い。(データは乏しい)
予防薬を早期から用いる。トピナ、トリプタ。
再発は1年以内が多いので1年は観察。

フロアから

  • 内膜症のある人では、ピルは?
    内膜症は不妊につながるので、その治療を優先する。
  • 予防薬の中止は? これは決まりはない。漫然は不要。
  • トラムセットは?
    非癌性疼痛で適応。薬物・アルコール依存あれば避けた方がいい。
    (どちらかというと、リリカの代わりに視床痛や神経痛で用いる薬かと)
  • 女性ではβブロッカーからが流れ?予防薬。
    デパケンは多嚢胞性卵巣症候群(PCO)と関連するデータあり。

■変容型片頭痛と緊張型頭痛

・実は鑑別は困難。

*参考


付録  A 1.5.1  慢性片頭痛 ( Appendix 1.5.1 Chronic migraine )


A 頭痛(緊張型または片頭痛あるいはその両方)が月に 15 日以上の頻度で3ヵ月以上続く*

B 1.1 前兆のない片頭痛の診断基準をみたす頭痛発作を 少なくとも 5回は経験している患者におこった頭痛。

C 少なくとも3ヵ月にわたり、次のC1またはC2あるいはその両方を満たす頭痛が月に8日以上ある。すなわち、前兆のない片頭痛の痛みの特徴と随伴症状がある。
1. 以下のa〜d のうちの少なくとも2つを満たす。
(a) 片側性
(b) 拍動性
(c) 痛みの程度は中程度または重度
(d) 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける。そして、以下のaまたはbの少なくともひとつ。
(a) 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
(b) 光過敏 および 音過敏
2.上記 C1の頭痛発作に進展することが推定される場合にトリプタン 又はエルゴタミン製剤による治療により頭痛が軽減する。

D 薬物乱用が存在せず※、かつ、他の疾患によらない※

*頻繁におこる頭痛の特徴を明確にするためには、通常、少なくとも 1ヶ月は日々の頭痛と随伴症状の性状を記録する頭痛ダイアリーをつける必要がある。ダイアリーのサンプルは Web から入手できる(http://www.i-h-s.org

※薬物乱用は 8.2薬物乱用頭痛の項に従って定義される。
※※病歴および身体所見・神経所見より頭痛分類5〜12を否定できる、または、病歴あるいは身体所見・神経所見よりこれらの疾患が疑われるが、適切な検査により除外できる、または、これらの疾患が存在しても、初発時の発作と当該疾患とは時間的に一致しない。


*参考 付録の出る前
慢性連日性頭痛はどう診察するのか?
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推奨のグレード C
背景・目的
1988年に国際頭痛学会が診断基準を発表して以来、特に毎日のように頭痛が出現し急性期薬物を頻回に使用している症例をどのように診断、分類するのか議論が続いている。慢性連日性頭痛はSilbersteinらにより提唱された頭痛分類で、1日に4時間以上の頭痛が1ヶ月に15日間以上続く頭痛とされ主に米国を中心として世界的に流布しているが、ICHD-Uには慢性連日性頭痛という病名は採用されなかった。しかし毎日あるいは毎日のように続く重症の頭痛患者を診断する際に、国際頭痛学会の診断基準では分類しにくいことが多く、新たな基準が必要と考えられてきた。

解説・エビデンス
Silbersteinらは1994年に慢性連日性頭痛を次の4型に分けた。
1. 変容性片頭痛(transformed migraine:TM)
2. 慢性緊張型頭痛(chronic tension-type headache:CTTH)
3. 新規発症持続性連日性頭痛(new daily persistent headache:NDPH)
4. 持続性片側頭痛(hemicrania continua: HC )
現在ではこの分類が世界的に流布している。1日に4時間以上というのは群発頭痛を除外するためであり、頭痛の持続期間に関しては、現在まで1ヶ月、3ヶ月 6ヶ月、1年以上と様々な文献があるが、ICHD-Uの慢性片頭痛、新規発症持続性連日性頭痛、持続性片側頭痛の診断基準に準じ、3ヶ月を超えてとするのが良いと思われる。またその分類で特に変容性片頭痛と慢性緊張型頭痛の鑑別が困難である場合があるが、もともとICHD-Uの診断基準を満たす片頭痛があり、頭痛の強度は減少するものの頻度が増加した頭痛と考える事が出来れば、変容性片頭痛と診断してよいものと思われる。
慢性連日性頭痛の病名は、ICHD-Uでは採用されていない。ICHD-Uの日本語版 2)に記載してあるように、変容性片頭痛はICHD-Uでは1.5.1「慢性片頭痛」か、8.2「薬物乱用頭痛」プラス「片頭痛」のいずれかである。もし鎮痛薬、エルゴタミン、トリプタンの乱用がある場合には、初診時には(1)片頭痛、(2)慢性片頭痛疑い、(3)薬物乱用頭痛疑いの 3つの診断がつけられ、その後2ヶ月間薬物を中止して頭痛が軽快すれば「薬物乱用頭痛」、中止しても片頭痛が慢性的に起こる場合に、「慢性片頭痛」と診断される。


トリプタン有効。
病歴確認が重要。
・緊張型頭痛の治療
鎮痛剤はW3回以下に。
抗うつ剤の効果は3ヶ月でみる。

・群発頭痛とTAC
群発 ワソラン(べラパミル)360mg、プレドニゾロン 適応外だが保険診療で認められた。
発作性片側頭痛 インドメタシンも同様。

・その他の一次性頭痛 ICHD-II

4. その他の一次性頭痛
o 4.4.2 オルガスム時頭痛
o 4.5 睡眠時頭痛
o 4.6 一次性雷鳴頭痛
o 4.7 持続性片側頭痛 Hemicrania continua
o 4.8. 新規発症持続性連日性頭痛 New daily-persistent headache (NDPH)

・性行為関連頭痛でトリプタンが追加。

*参考

睡眠時頭痛はどのように診断し治療するか?

1 診断

睡眠時頭痛は、国際頭痛分類第2版(ICHD-II )に準拠して診断する。

2 治療

カフェイン、リチウム、インドメタシンなどが有効である
推奨のグレード 診断:A 治療:C

背景・目的

睡眠時頭痛はまれな疾患で、「目覚まし頭痛」ともいわれ、1988年にRaskinによってはじめて報告されて以来現在までおよそ90例に及ぶ。

解説・エビデンス

1.診断

ICHD-II による診断基準 :
A. B〜Dを満たす鈍い頭痛
B. 睡眠中にのみ起こり、覚醒をきたす
C. 次の特徴のうち少なくとも2項目を満たす
1.1ヶ月あたり15回を越えて起こる
2. 覚醒後15分以上持続する
3. 初発年齢は50歳以上
D. 自律神経症状がなく、悪心、光過敏、または音過敏のうち2つ以上を示さない
E. その他の疾患によらない
これまでの報告は症例報告がほとんどであるが以下のような特徴があげられる。男女比は1:1.5 と女性に多く、平均の発症年齢は50〜60歳である。頭痛の程度は軽度〜中等度である. 両側性の鈍痛のことが多い。持続時間は15 〜180分で、発作頻度は1〜2 回/日で多くは睡眠後3時間の午前1〜3時に出現する。画像診断によって二次性頭痛を鑑別することが重要である。鑑別診断として、睡眠時におこる一次性頭痛である群発頭痛 、三叉神経・自律神経性頭痛(発作性片側頭痛、SUNCT 症候群)、持続性片側頭痛などがあげられる。

2.治療

薬物治療としては、カフェイン、リチウム、インドメタシンなどによる効果が報告されている。

・一次性雷鳴頭痛
除外診断
成人女性に多い
二次性雷鳴頭痛はいろいろ
特にRCVS 85%が雷鳴 SSRIとの関連 PLESだと予後悪い

*参考

一次性雷鳴頭痛はどのように診断し治療するか?

1.診断

1次性雷鳴頭痛は国際頭痛分類第2版 (ICHD-II) に準拠して診断する

2.治療

二次性に雷鳴頭痛を起こしうる疾患の鑑別が最も重要で、確立された治療法は明らかでない。
推奨のグレード 診断:A  治療:C

背景・目的

雷鳴頭痛の治療は原因疾患を鑑別するところから出発し、的確な診断ならびに専門医による治療が必要である.鑑別診断力の向上が目的である。

解説・エビデンス

1.診断

一次性雷鳴頭痛の診断基準
A. BおよびCを満たす重度の頭痛
B. 以下の特徴を両方満たす
C.突然に出現し、 1分未満で痛みの強さがピークに達する
D.1時間〜10日間持続する
E.発症後の数週または数ヶ月にわたって、定期的な再発はない
F.その他の疾患によらない

2.治療

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血、未破裂嚢状脳動脈瘤、頸動脈または椎骨動脈の解離、脳内出血、脳梗塞、脳静脈洞血栓症、下垂体卒中は必ず否定しなければならない.また、中枢性神経系血管炎、可逆性良性中枢神経系アンギオパチー、第三脳室コロイド嚢胞、低髄液圧、急性副鼻腔炎(特に気圧障害)も原因となる.二次性に雷鳴頭痛を起こしうる疾患の鑑別が最も重要で、治療も疾患に応じて行う。一次性電鳴頭痛とは器質性原因疾患のすべてが否定された場合のみに限るが、確立された治療法は明らかでない。
以下に二次性に雷鳴頭痛を起こす疾患の特徴を示す。
(1)脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血:くも膜下出血の頭痛の典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」である。問診上、このような頭痛患者がいれば、くも膜下出血を強く疑わなければならない。くも膜下出血の大発作をきたす前に少量な出血(マイナーリーク)を20 %前後の症例で認めることがある。このような症例を正しく診断できた場合と誤診した場合では予後に大きな差が認められるため注意が必要である。マイナーリークの症状は突然の頭痛が最も多いが、悪心・嘔吐、意識消失、めまいが加わってくることもある。
(2)未破裂嚢状動脈瘤:頭痛は非特異的で慢性的な頭痛の方が多いが、突然の激しい頭痛をきたすこともある。動脈瘤の大きさが10mm以上のことが多く、動脈瘤の血栓化や局所的な髄膜刺激が原因とされる。脳神経麻痺、錐体路症状、視力・視野障害などを伴うこともある.特に動眼神経麻痺を合併するときには注意を要する。内頸動脈 - 後交通動脈分岐部、脳底動脈-上小脳動脈分岐部、脳底動脈先端部に発生した動脈瘤が増大し、動眼神経を圧迫することが原因である。MRA 、CTA、脳血管撮影での脳血管の精査が必要である。
(3)頸動脈または椎骨動脈の解離による頭痛:頸動脈解離では前頭部痛、椎骨動脈解離では後頭部痛が多い。頭痛、頸部痛ともに解離と同側に認められることが多い。頭痛の鑑別とともに頚動脈の雑音、眼症状、下位脳神経麻痺、ホルネル症候群などを伴っていないか調べなければならない。早急にMRI、MR-angiography (MRA) 、超音波検査、CT-angiography、脳血管撮影などで動脈解離を検索する必要がある。
(4)脳梗塞による頭痛:出血型脳卒中に比べて突然の頭痛や随伴する嘔吐は少ない。主幹動脈閉塞性脳梗塞に頭痛は多い傾向がある。
(5)脳内出血による頭痛:小脳出血と脳葉出血患者に頭痛は多く見られる。頭痛は出血と同側で、小脳出血では後頭部痛が多い。脳内出血の血腫がくも膜下腔に波及すると、髄膜刺激症状で頭痛を呈しやすい。
(6)脳静脈洞血栓による頭痛:雷鳴頭痛とともに嘔吐、意識障害、てんかん発作、うっ血乳頭、運動障害などの症状が随伴することが多い。CT、MRI、MRAが有用である。
(7)下垂体卒中による頭痛:突然の頭痛とともに視野障害、動眼・滑車・外転神経麻痺、嘔吐、複視、発熱などの症状を随伴する場合は下垂体卒中を考えなければならない。CTよりもMRI が有用である。

フロアから

  • いわゆる変容性片頭痛の現代での分類は?
    慢性片頭痛と慢性緊張型頭痛に分類される。

*参考
III 緊張型頭痛
III−2 緊張型頭痛はどのように診断するか
推 奨 【グレードA】
緊張型頭痛は、国際頭痛分類第2版(ICHD-II)の診断基準に準拠して診断する
【解説・エビデンス】
以下に緊張型頭痛の診断基準(日本語版)を示す。
各緊張型頭痛は主にその発症頻度(A項)と持続時間(B項)で診断される。
そして以下の項目をみたすものである。
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
1.両側性
2.性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
3.強さは軽度〜中等度
4.歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
1.悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.その他の疾患によらない

2.1稀発反復性緊張型頭痛は、1ヵ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で生じる頭痛
2.2頻発反復性緊張型頭痛は、1ヵ月に1日以上、15日未満(年間12日以上180日未満)の頻度生じる頭痛
2.3慢性緊張型頭痛は、1ヵ月に15日以上(年間180日以上)の頻度生じる頭痛
2.4緊張型頭痛の疑いは、緊張型頭痛の診断基準をひとつだけみたさず、かつ片頭痛でないものである。

一般臨床家からの意見では片頭痛と緊張型頭痛は重症度や悪心・嘔吐、光・音過敏の有無などからは鑑別できない場合がしばしばあり、緊張型頭痛と片頭痛の移行型あるいは中間型とも考えられる頭痛の存在が問題となる。これらの論議に加え、古くから問題となっている筋緊張とこの分類の頭痛の問題がいまだ解決されていない点も問題という意見も散見される(「III/4。緊張型頭痛の病態はどのように理解されているのか」参照)。また、ICHD-Iの緊張型頭痛の基準では陰性所見が多く採用されているため、それ以外の頭痛も拾ってしまうという問題点も提起されてきた。

ICHD-Iの欠点に鑑み、ICHD-IIでは慢性片頭痛と緊張型頭痛の疑いの項目を盛り込みこの問題をほぼ解決したと考えられる。
さらに、ICHD-IIでは反復性緊張型頭痛を、頭痛の頻度が月あたり1回未満の稀発型と頻発型にさらに細分されている。稀発型が個人に及ぼす影響は比較的わずかなものであるため、医療関係者からあまり大きくは注目されていないが、しかし、頻繁に罹患することにより、時として高価な薬剤や予防治療薬が必要となるほどの支障をきたすことがある。また、慢性型に分類される頭痛は生活の質(QOL)を大きく低下させ、高度の障害を惹き起こす深刻な疾患である。

III−6 緊張型頭痛の急性期(頭痛時、頓服)治療にはどのような種類があり、どの程度有効か。またどのように使い分けるか
推 奨 【グレードB】
緊張型頭痛の急性期(頓挫)療法には薬物療法と非薬物療法がある。治療法の種類やその内容を十分に知った上で治療する必要がある。有効性に関しては治療法により異なるが、RCTにおいて十分に有効性が証明されている治療法は、鎮痛薬、NSAIDsである。また病型や病態に則した治療薬の選択が望まれるが、治療薬の使い分けに関するエビデンスは少ない。頭痛発作時には急性期療法を使用し、慢性型緊張型頭痛には予防療法を併用することが望ましい。
【背景・目的】
従来から緊張型頭痛の急性期療法として、種々の薬物療法と非薬物療法が臨床の場では用いられているが、それらの有効性については必ずしも十分なエビデンスがあるとは言えない。緊張型頭痛の急性期治療法を列挙し、エビデンスに基づいた有効性を示す。しかし、その使い分けについては明確に示されていない。エビデンスに基づいた治療薬の使い分けを提示する。
【解説・エビデンス】
緊張型頭痛の急性期治療には薬物療法と非薬物療法があり、以下に詳細を示す
1.鎮痛薬およびNSAIDs・カフェイン・抗うつ薬
1)鎮痛薬およびNSAIDs(多数あるが、例えばアスピリン500〜1000mg、アセトアミノフェン500mg、イブプロフェン200mg頓用など)
2)カフェイン(100〜300mg頓用)
3)抗うつ薬(例 アミトリプチリン10〜25mg)
2.抗不安薬・筋弛緩薬
1)抗不安薬(例 ジアゼパム2〜5mg、エチゾラム0.5〜1mg)
2)筋弛緩薬
A.チザニジン(テルネリン®)3〜6mg/日
B.エペリゾン:eperisone(ミオナール®)150mg/日
C.ダントロレン:dantrolene(ダントリウム®)25〜150mg/日
3.スマトリプタン
4.ボツリヌス毒素
【非薬物療法】
治療の中心となる薬物治療について述べれば、 保険適応制限を別にしてNSAIDの使用が最も勧められる。しかし、胃腸障害、造血器障害などの副作用があるため、本邦における薬剤の至適用量は欧米と比較して少ない。また、NSAIDの慢性的使用による更なる頭痛誘発が問題となる。さらに、カフェインの併用はエビデンスがあるものと結論されるが、消化器系副作用が考慮されるべきである。カフェイン・抗うつ薬については有用との数多くの報告があるが、そもそも緊張型頭痛を病型別に分類しないで検討している点に留意すべきであり、急性期治療としての有用性については疑問が残る。また、頭痛体操やバイオフィードバックについては、エビデンスの有無にかかわらず考慮されるべきものであろう。ボツリヌス毒素は保険適応制限がある。
一方、緊張型頭痛の治療薬の使い分けに関するエビデンスは乏しい。しかし、緊張型頭痛であっても、頻繁に罹患することにより、時として高価な薬剤や予防治療薬が必要となることがある。さらに慢性型頭痛は生活の質(QOL)を大きく低下させ、高度の障害を惹き起こす深刻な疾患であり、治療が必要となることは個人的、社会的見地からも当然のこととなり、経済的費用負担を伴う。慢性緊張型頭痛においては中枢性疼痛メカニズムがより重要な役割を果たしているのに対し、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛については末梢性疼痛メカニズムが役割を果たしている可能性が最も高い。従って、このような患者群に対しては予防療法が有用であり、その使い分けが必要である。
82人の緊張型頭痛を対象にしたオープンラベル試験で、amitriptylineは慢性緊張型頭痛には有効であるが、発作性緊張型頭痛には有効でないことが示されている。この検討からもわかるとおり、一般的には慢性緊張型頭痛以外には予防療法は必要ないであろう。しかし、頻発反復性緊張型頭痛では、鎮痛剤の乱用や日常生活に対する支障度を考慮にすると、予防薬の適応がある場合がある。

II.シンポジウム1 脳脊髄液減少症

【当院での背景】起立性頭痛は、あまり整理されていない感じがしていたので、今まで積極的には診断していなかった。心因性頭痛との区別があまりに困難との印象をもっていたし、問診に限界を感じるし。しかし、そろそろ共通見解が出てきたようだ。というわけで、今後は当院でも起立性頭痛の診断を積極的に始めようと思う。その端緒となるシンポ。

(1)Lumbar-uplift testによる起立性頭痛のスクリーニング 問診との比較

慢性連日性頭痛患者に対し、問診で起立性頭痛が検出できるか検討した。1.睡眠時などしばらく臥位になると頭痛が楽になるか?2.起床時、上体を起こしたのちに頭痛が増悪するか?の2点で問診。そののち起立性頭痛と思うかどう被験者に判定させた(半構造化問診)。その結果とLumbar-uplift testとの比較。Lumbar-uplift testとは、小林先生考案の方法で、仰臥位ではなく積極的に腰を上げた姿勢をとらせて、頭痛が改善するかどうか判定する。結論、LUTをしないと見逃しが多い。

【解説】たしかに起立性頭痛は、問診しても、はっきり答えられる人はあまりいないので、有用な方法かと思う。しかし、頭痛の人に、腰を上げて寝てもらうのも、少々面倒だ。慢性連日性頭痛の人にシェロング(立位での血圧変化)をするときに、腰を上げて寝てもらうようにして、頭痛の変化を記録しようと思う。
POTS体位性頻脈症候群の診断のために、シェロングの時、脈も同時に記録することにしたし、今後、当院のシェロングのやり方は、若干変化します。
POTS、心因性の頭痛をどう除外するか、という話題が出た。治療という点からすると、POTSは安静にしてはよくないし、特発性低髄液圧症候群SIH*では安静が基本なので、その区別は重要だ。POTSは連日性頭痛になることは少なく、SIHでは寝てもすぐに楽にはならない、という意見だった。

*参考
I-19 特発性低髄液圧性頭痛はどのように診断し、治療するか

推 奨
【グレードA】

1.診断
特発性低髄液圧性頭痛は国際頭痛分類第 2 版(ICHD-II)に準拠して診断する。
2.治療
治療はまず安静臥床・輸液などの保存的療法を行う。改善が認められない場合に画像診断で髄液漏出部位を確認できれば、硬膜外血液パッチ(epidural blood patch : EBP)などの侵襲的な治療の適応を考える。

【背景・目的】
国際頭痛分類第 2 版(ICHD-II)によると、低髄液圧による頭痛は、7。「非血管性頭蓋内疾患による頭痛」の7.2「低髄液圧による頭痛」にコード化され、さらに下記のサブフォームに細分化される。
7.2.1 硬膜穿刺後頭痛
7.2.2 髄液瘻性頭痛
7.2.3 特発性低髄液圧性頭痛

特発性低髄液圧性頭痛は、自発性頭蓋内圧低下症(spontaneous intracranial hypotension)、一次性頭蓋内圧低下症(primary intracranial hypotension)、髄液量減少性頭痛(low CSF-volume headache)、低髄液漏性頭痛(hypoliquorrhoeic headache)などの呼称が用いられてきたが、「特発性低髄液圧性頭痛」(7.2.3 Headache attributed to spontaneous(or idiopathic)low CSF pressure)が採用された。
特発性低髄液圧性頭痛の本態は脳脊髄液量の減少による。 脳脊髄液量減少は頭痛のみならず、多彩な症状を出現させる(低髄液圧症候群)。髄液圧はMonro-Kellie doctrineにより代償されて正常圧となりうる。そこで特発性低髄液圧性頭痛に対して「脳脊髄液減少症」という病態名も提唱されている。
特発性低髄液圧性頭痛は「特発性」という名称にもかかわらず、最近は神経根の通過するdural sleeve からの漏出(dural tear)や髄膜憩室からの漏出が有力な原因とされている。その誘引としては、いきみ、咳込み、気圧の急激な低下、性行為、頭頸部外傷、しりもち、結合組織の異常による硬膜脆弱性などが挙げられている。 低髄液圧の原因にはビタミンA低下症など髄液の産生低下によるものも存在することに留意する。
頭部外傷後遺症、むち打ち症、自律神経失調症、不定愁訴、慢性疲労症候群、うつ病と診断されてきたもののなかに「脳脊髄液減少症」が含まれている可能性が本邦で報告されている。

【解説・エビデンス】

■7.2.3 「特発性低髄液圧性頭痛」の診断基準(ICHD-II)

A.頭部全体 および、または 鈍い頭痛で、座位または立位をとると15分以内に増悪し、以下のうち少なくとも1項目を満たし、かつDを満たす
1. 項部硬直
2. 耳鳴
3. 聴力低下
4. 光過敏
5. 悪心

B.少なくとも以下の1項目を満たす
1. 低髄液圧の証拠をMRIで認める(硬膜の増強など )
2. 髄液漏出の証拠を通常の脊髄造影、 CT脊髄造影、または脳槽造影で認める
3. 座位髄液初圧は 60 ミリ水柱未満

C.硬膜穿刺その他髄液瘻の原因となる既往がない

D.硬膜外血液パッチ後、72 時間以内に頭痛が消失する

ICHD-IIの基準には特発性低髄液圧性頭痛(以後 SIH : spontaneous intracranial hypotension と略記)の症状、検査所見、治療が簡潔に定義されている。SIHの診断・治療法についてはこの診断基準から出発するのが適当である。 診断基準のD項目として硬膜外血液パッチによる症状改善が診断条件に含まれているが、これは硬膜外血液パッチを施術しないと特発性低髄液圧性頭痛と診断できないということではなく、SIHに硬膜外血液パッチを施術した場合は「72時間以内に頭痛が消失する」という意味である。

●頭痛について
起立性頭痛 orthostatic headache が特徴であるが、それが顕著でないケース、まれに逆説的体位性頭痛のこともある。 時に雷鳴頭痛として発症する症例もある。 低髄液圧症候群以外の起立性頭痛の原因としてたとえば体位性頻拍症候群(POTS)が挙げられる。

●頭痛以外の症状
ICHD-IIでは項部硬直、耳鳴、聴力低下、光過敏、悪心のなどの症候を診断条件に挙げている。 日本脳脊髄液減少症研究会は脳脊髄液減少症の症状として表1のような症状を挙げている。これらは発熱・下痢などの軽度の脱水状態で症状が悪化する。

表1.脳脊髄液減少症の症状(日本脳脊髄液減少症研究会)

―――――――――――――――――――――――

1)痛み:
*頭痛、*頸部痛、*背部痛、腰痛、四肢痛
2)脳神経症状:
*嗅覚障害、*視力障害、*複視、顔面違和感
*聴力障害、耳鳴、眩暈、*味覚障害、咽頭違和感
3)自律神経症状:
*微熱、*動悸、胃腸障害(腹痛・便秘・下痢)、手足冷感、*発汗異常
4)高次大脳機能、精神症状:
記憶力低下、思考力低下、*集中力低下、*睡眠障害、うつ状態
5)その他:
内分泌障害、全身倦怠感

*を付した症状は多くの患者に共通して認められる症状を示す。

―――――――――――――――――――――――

●髄液圧
SIHの診断には腰椎穿刺を行い、髄液圧の低下を証明することが重要ではあるが、腰椎穿刺自体がさらなる髄液漏出を招く可能性があるので、硬膜の増強などMRI所見陽性の患者では避けるべきである。SIHでも髄液圧は Monro-Kellie の法則により正常圧となる可能性もある(宮澤の報告では18%、Mokriの報告でも18%が該当)。ICHD-IIの診断基準ではMRI所見、脊髄・脳槽造影所見、髄液圧の少なくとも1項目を満たせば必ずしも低髄液圧でなくてもよいとされている。

●画像診断
脳脊髄液減少症の画像診断検査には脳脊髄液漏出を診断するRI cisternographyやCT/MR myelographyによる直接所見と、脳脊髄液減少を示すMRI所見がある(表2)。 通常のCTの診断的価値は乏しい。まれに低髄液圧症候群には両側性慢性硬膜下血腫を合併することもあり、その場合はCTも診断の補助になりうる。
MRIによる硬膜造影所見は低髄液圧症候群を疑う有力な根拠であるが、必ずしもこの像が捉えられるとは限らない。 一方、悪性腫瘍の硬膜浸潤、肥厚性硬膜炎など多くの疾患で硬膜造影が認められる。

表2.脳脊髄液減少症の画像診断

―――――――――――――――――――――――

1)低髄液圧の所見(間接所見)
MRI(単純+ガドリニウム(Gd)造影、矢状断+冠状断)
a)脳偏位の所見
硬膜下腔拡大、小脳扁桃下垂、鞍上槽の消失、脳幹(橋)の扁平化
b)うっ血の所見
びまん性硬膜増強効果、脳表静脈の拡張、脳下垂体の腫大
2)脳脊髄液漏出の診断(直接所見)
RI cisternography, CT/MR myelography
a)脳脊髄液漏出像
b)RI膀胱内早期集積像

●Mokriによると髄液量減少症候群は表3の4タイプに分かれる。SIHはさまざまな病型があることに留意して診断する。

表3.髄液量減少症候群の4タイプ(Mokri,1999)

―――――――――――――――――――――――

I型(典型):
頭痛あり、MRI異常、低髄液圧
II型(正常圧型):
頭痛あり、MRI異常、髄液圧正常
III型(正常髄膜型):
頭痛あり、低髄液圧、硬膜造影なし
IV型(無頭痛型):
低髄液圧、MRI異常、頭痛なし

―――――――――――――――――――――――

■治療
SIH に対して Mokri は表4に示すような治療法を挙げている。
表4.低髄液圧症候群の治療法(Mokri,2004)
―――――――――――――――――――――――

1.安静臥床
2.水分補給
3.カフェイン
4.テオフィリン
5.腹帯
6.コルチコステロイド
7.消炎鎮痛薬
8.硬膜外血液パッチ(EBP)
9.硬膜外生理的食塩水持続注入
10.デキストランの硬膜外注入
11.フィブリン糊硬膜外注入
12.液体髄注
13.漏出部位の修復術
―――――――――――――――――――――――

SIHの治療法は保存的治療と侵襲的治療に分かれる。SIHはときには自然治癒することもあり、その補助手段として安静臥床と輸液(1000〜1500mL/日)などの保存的治療は有効である。 約2週間の治療が望ましい。
侵襲的治療としては硬膜外血液パッチ(epidural blood patch : EBP)がある。 漏出部位が同定されている場合には、その近傍からEBPを施行する。漏出部位が同定されていない場合には、まず腰椎部からEBPを施行し、次に頸椎〜上位胸椎部からEBPを施行して脊椎硬膜外腔の全域に血液パッチを行う。その際には、EBPに用いる血液に造影剤を加えて(血液:造影剤= 3:1)、X線透視下にEBPの血液の拡散を確認するとよい。 注入量:腰椎部から注入する際は、成人男性20〜30mL、成人女性 15〜25mL、頸椎・胸椎から注入する際は15mL以下が目安となる。

EBPの効果はSencakovaらによると36%(9/25)は最初のEBPによく反応、33%(5/15)は2回目の EBPで症状消失、3回以上(平均値4回)のEBPにより50%(4/8)が有効であった。 外傷性低髄液圧症候群については改善以上が65%(95/147)と報告されている。EBPの厳密なRCTによる有効性の検討は今後の課題といえる。

(2)外傷後脳脊髄液減少症のMRミエログラフィーMRM

SIHに比べると、外傷後は画像所見に乏しい。
1.MRI 役に立たない
2.RIC脳槽シンチ 穿刺部からのもれと区別が?
3.MRM 穿刺しないで診断できるので有用

(3)未成年の低髄液症候群 12例(9例は外傷後、平均16歳)で検討。

小児は少ない。
頭痛主訴で、学業に支障をきたすレベル。
RIC、CTMで非対称的な漏れなら確定診断。
穿刺部位からの漏出の問題を避けるため、RICとCTMは別の日に行った。
11名にEBP行い8例で改善。

・問題点
POTSとの鑑別は困難で、一週間安静にして頭痛が改善することを確認。
クリスマスツリーサインは、すべて除外すべきか?

*余談 SIHは結合織の先天異常が多い。例)先天性結合組織形成不全症 エーラス・ダンロス症候群。皮膚の過伸展、関節の過可動、皮膚の脆弱、易出血を呈する。マルファン症候群。・循環系(心臓・血管)大動脈解離、大動脈弁閉鎖不全・骨と筋肉 、手足が長い、両親に比べ高身長・目、若年性の白内障。

(4)SIHと慢性硬膜下血腫CSDHの合併。8例で検討。

・41F。SIH疑い、両側SDH薄くあり。入院安静でも頭痛悪化。RICで漏出なし。その後意識低下有、SDHふえたためOpして改善。
・48M。両側のSDHで紹介。主訴頭痛。RICでもれあり、EBPで改善。
・46M。頭痛主訴。両側SDH。↑同様。SIHとSDHどちらを先に治療するかはまだ検討中。

質問やコメント

  • 両側のSDHは急に意識が悪くなることあり、注意が必要。だからSDHの治療を優先すべき。しかし、SDHが自然治癒することもある(3/8例)ため、議論が必要。
  • 比較的若い人に多い?(SDHは高齢者に多い)
  • SDHの圧が低い(SIHがあるから?)
  • SIHをEBPするとSDH悪化する?

(5)脳脊髄液漏出のないSIH

RICで漏出なし。
・57F。主訴頭痛、起立性頭痛。MRIで硬膜増強、RIC−、CTM+。EBPで改善。
・68F。2年前転倒、その後、ゆがんで見えたり(視力障害)、めまい、頭痛出現。EBP(漏出止める)と生理食塩水・人工髄液注入(液増やす)で改善。

シンポジストからTake home message

(1)小林D 1500人の頭痛初診で130人が起立性頭痛だった。少なくない。EBPまでしたのは4名のみ。補液・安静程度で自然治癒が多い。初診で診断つけてあげることが大切。
(2)高橋D MRMで確定し、EBP行い90%は改善。しかしEBPは広範囲に必要だった。
(3)不破D 対象が1、検査してほしい 2、体位性頭痛の既往、の患者。SDHの合併は20才以下ではないが、40歳くらいではある。
(4)戸田D SDHとISHの合併。急性期であれば治療反応性が良い。SDH高齢者だと予後悪い?ICP(髄液圧)高いからかも。ISH合併例はICP低い傾向にあるが。
治療は安静だが、高齢者を寝かしておいていいか?という問題がある。だからSDHの治療を積極的にすべきという意見もある。SDHを治療すると体位性頭痛も改善する。
(5)篠永D 1、CSF量 2、漏出 3、ICPと3つの要素がある。EBPして漏出なくなっても頭痛が続く人あり。髄液が増えにくい人がいるのではないか?静脈圧が低くて吸収が多いとか。

III.ランチョンセミナー 間脳下垂体疾患の頭痛
  • まず、下垂体腫瘍・疾患の診断は、軸位での診断は無理
  • 疾患にはいろいろある
    腫瘍、腺腫、過誤腫
    のう胞性 ラトケのう胞・水腫
    まれだが下垂体炎、下垂体卒中
  • 下垂体腫瘍の4割に頭痛がある。
    • サイズとは無関係
    • 前頭部から眼窩部
    • 重度
    • 三叉神経痛・群発頭痛様 TACsとの関連
    • 進行性
    • GH・PRL産生では、小さくても痛い
    • Op後すぐ改善
  • 47M、非機能性下垂体腺腫。視野異常、片頭痛様頭痛。
  • GH産生腫瘍
    • IGF−1(インスリン様成長因子-1)で診断。
    • 巨人症または先端肥大症。
    • 特徴 鼻が大きい、唇が大きい、手が大きい。
    • CT、MRIで正常のことも。
  • 雷鳴様頭痛、咬合不全、48M。GH産生腫瘍だった。軸位では?
  • ソマトスタチンアナログに鎮痛効果が認められることがある。
  • 下垂体卒中。有名だが珍しい。ひどい頭痛・複視・吐気。
  • 62M、夜中に頭痛、複視、眼瞼下垂。CTでSAHあり。しかし、動脈瘤なし、下垂体のバルーニングあり。2例しか経験なし。
  • 下垂体卒中と間違えやすい、ラトケのう胞。MRIで見つかる遺残のう胞。鞍内または鞍上。T1ハイのムチン様物質。頭痛の原因に。
  • ラトケのう胞の頭痛。80%に頭痛。目の奥が痛む。下垂体卒中様で、しばしばひどい頭痛が突然。Opで改善。
  • 46F。頭痛の既往なし。頭重と両目を奥からつかまれる様な頭痛。月に何回も。視野障害有。ラトケのう胞だった。Opで改善。再発有。
  • トルコ鞍の疾患を見逃さないためには、スカウト画像だけでも矢状断を見る!
  • 下垂体炎は、ステロイドで改善。
IV.招待講演1 Management of Migraine during Pregnancy
  • 妊娠中はなんといってもアセトアミノフェン(カロナール)が安全だ。
  • NSAIDsも、First Trimester(妊娠第1期・初期)Second Trimester(妊娠第2期・中期)Third Trimester(妊娠第3期・後期)のうち2期まではOK。授乳期も、アスピリンを除外すればOK。
  • 吐気に対しては、ナウゼンリンは禁忌だが、プリンペランは使用可能。
  • 片頭痛そのものには妊娠に悪影響はない。
  • だから治療は安全であるべきだ。
  • しかし、片頭痛が、妊娠高血圧と子癇前症と関連があるとのデータが蓄積している。
  • 同様に、妊娠中の脳卒中の危険因子である。したがって、もし妊娠中に新たな前兆を伴う片頭痛がでたり、前兆の変化が見られたら、血小板減少症や静脈洞血栓症、子癇に注意すべきだ。
  • トリプタンの影響は、スマトリプタンのデータがある
    出産時の先天異常の比率 平均3.4%。
    スマトリプタン使用 First Trimester 4.3%
    Any Trimester 4.4%
    許容範囲と思われる。
  • 予防薬が必要なら、妊娠中も授乳中もプロプラノロール10〜20mgがファーストチョイス。トリプタノールも2期まではOK。デパケン、トピナは禁忌。
V.特別企画2 二次性頭痛の現状と展望

(1)脳血管障害 外科の立場から

●クモ膜下出血SAHの頭痛、2割は非典型的。
前駆頭痛0〜43%。
SAH診断の遅れ、数〜25%あり。
過去10年で、歩いて外来に来たSAH患者119人。そのうち20%は初診では診断できなかった。CT 6時間以内なら100%。7日後では50%陽性。MRI FLAIRで5日以内なら100%。腰椎穿刺。

●可逆性脳血管攣縮症候群RCVS SAHやprimary angiitis of central nervous system PANCSを除いた、頭痛と可逆性の脳血管攣縮をともなう病態。
雷鳴様頭痛は85%。
女性に多い。
未破裂動脈瘤クリッピング、脳外科のOpや妊娠、薬剤*の投与に関連することも。

*参考

セロトニン関連薬 SSRI、トリプタン製剤
Illicit drug 大麻、コカイン、エクスタシー、アンフェタミンとLSD
エルゴタミン類 エルゴタミン、メテルギン、リスリド、ブロモクリプチン
Sympathomimetic
drug
エフェドリン及び関連のダイエットピル
免疫抑制剤 タクロリムス、シクロフォスファミド、インターフェロン-α
その他 ニコチン・パッチ、ginseng(薬用ニンジン)、インドメタシン、不節制な飲酒、経口避妊薬

●CSD大脳皮質拡延性抑制と脳血管ズパズム
Spreading depolarization 脱分極の持続でエネルギーを失う

CSD 虚血

脳血管攣縮に進んだり進まなかったり。いずれにせよ虚血は生じている。

フロアから

  • 未破裂脳動脈瘤で雷鳴頭痛があったとき、どうする?

(2)脳血管障害 内科の立場から

●脳梗塞の頭痛 8%程度。脳底動脈系で多い。

●巨細胞性動脈炎GCA 側頭動脈炎。60歳以上の新規発症持続性頭痛、一過性黒内障*、頭皮動脈の圧痛と腫脹。

*参考

突然、片眼だけに「黒いカーテンがおりてくるように」、「白っぽく霧がかかるようになって」、「黒い水平線が上がってくるようにして」、「写真のネガのような見え方のようになって」、そして目が見えなくなってしまうというような症状が出現、このような症状が2〜3分の間続いて、普通、数分以内、長くても20分位で元の見え方に戻る。
眼球に行く動脈(眼動脈)は、脳に行く動脈(内頚動脈)が一旦頭の中に入って、しばらく走ってから、その後、枝分かれして、再び頭の外に出て眼球に向かいます。要するに眼動脈は枝分かれした脳の動脈のうちの1本。一過性黒内障は、首から脳に至る内頚動脈、そして、その内頸動脈から枝分かれして眼動脈を介して眼球にいたるまでの血管系に問題が起こり、そのせいで眼に必要な量の血流が供給されなくなってしまった際に生じる症状。この原因としては、ひとつは動脈硬化が起きて動脈が狭くなっている部分に血栓〈けっせん〉(血液の固まり)が形成され詰まってしまった場合、あるいは血圧の変動(血圧の低下)などをきっかけとして、狭くなった部分より先に十分な血液が流れなくなった場合。もしくは、動脈硬化が起こって狭い部分が出来ていますと、狭くなった動脈の壁の部分に血液の塊(血栓)が出来やすくなります。そして、なにかの拍子に、内頸動脈〜眼動脈にかけての部分で出来た血栓が血管の壁から剥がれ、塞栓となって先の方の動脈の方に流れて行って、そこを詰まらせてしまう場合などがあります。
この一過性黒内障は、内頚動脈系の一過性虚血発作(TIA)のひとつで、脳梗塞の警告症状と考えられています。例えば、内頚動脈の壁に出来た血栓の一部が剥がれて眼動脈の方に流れて、そこが詰まってしまいますと一時的に目が見えなくなってしまうのです。一方、この剥がれた血栓が脳の動脈の方へ流れて行って、その動脈を詰まらせてしまいますと半身の麻痺や、しびれ、言語障害が起こるというわけです。そして、完全に詰まらせてしまった場合は脳梗塞になってしまうことになります。

●頸動脈・椎骨動脈解離 通常片側性頭痛。頭痛は55〜100%見られる。有痛性のホルネルや耳鳴が突然発症したら、頸動脈解離の可能性が高い。内頸動脈解離では患者の90%が、障害血管と同側の80%に眼窩、顔面、頸部の疼痛を訴える(有痛性Horner症候群自体は28%)。
41M、突然の頸部痛で発症した例。椎骨動脈解離。

*参考

表 Horner症候群の臨床症状

同側の軽度(通常2mm以下)の眼瞼下垂
下眼瞼の上昇(upside down ptosis)
眼球陥凹
患側縮瞳による瞳孔不同
散瞳の遅延
輻湊異常(振幅の増大または麻痺)
患側顔面の無汗症
先天性では虹彩異色症


内頚動脈・椎骨動脈解離における頭痛・頚部痛
Headache and neck pain in spontaneous internal carotid and vertebral artery dissections.
著者: Silbert PL/Mokri B/Schievink WI
出典: Neurology/ 45巻, 8号, 1517-22頁/ 発行年 1995年08月

エビデンスレベルIV
目的
内頚動脈解離と椎骨動脈解離の頭痛の程度、部位、種類ならびに頭痛に随伴する症状を調べる
研究施設
米国のMayo Clinic(Neurology and Neurosurgery)
研究期間
1970年から1990年
対象患者
内頚動脈解離患者135人と椎骨動脈解離26人
介入
診断はすべて脳血管撮影で行った
結果
動脈解離が発症する以前に頭痛を有した患者は、内頚動脈解離では片頭痛が18%、緊張性頭痛が51%、椎骨動脈解離では片頭痛が23%、緊張性頭痛が42%であった。動脈解離発症時における頭痛は内頚動脈解離で68% (頭痛の先行は47%)、椎骨動脈解離で69% (頭痛の先行は33%) にみられた。突然に発症した頭痛 (雷鳴頭痛) は内頚動脈解離で14%、椎骨動脈解離で22%であった。内頚動脈解離の頭痛は、前頭/前頭側頭部に多く (61%)、持続性が73%、拍動性が25%、前外側の頚部痛が26%で認められた。椎骨動脈解離の頭痛は、後頭部が多く (83%)、持続性が56%、拍動性が44%、後頚部痛が46%に認められた。頭痛の後、神経脱落症状が出現するまでの時間は内頚動脈解離で平均4日、椎骨動脈解離で平均14.5時間であった。
結論
頭痛の鑑別とともに頚動脈の雑音、眼症状、下位脳神経麻痺、ホルネル症候群などを伴っていないか調べなければならない。
非拍動性、軽度の頭痛が多い。

CVT脳静脈洞血栓症
発症早期から、頭重感、頭痛がみられる。・後天的危険因子(脱水、たばこ、手術、外傷、妊娠、産褥、抗リン脂質抗体症候群、癌、避妊薬などの外因性ホルモン)
・先天的危険因子(遺伝性凝固異常症:Protein C欠損、Protein S欠損)
大脳表面を灌流した血液の主な戻り道になる上矢状静脈洞の血栓症が最も多く、次いで横静脈洞、海綿静脈洞の血栓症の頻度が多い。けいれんや局所症候が出ないと診断されることは少ないだろう。
46F、頭痛、嘔吐、麻痺で発症した例。

●中枢神経系の良性アンギオパチー
RCVSだけなら予後良好。
PRESになるとよくない。
若い人の産褥期に多い。脳実質病変がないと見逃しやすい。特に初期ではMRAでも診断がつかない。

フロアから

  • 皮質型SAHを見かけたら疑い、血管撮影を。

(3)脳腫瘍BTの要素

  • 脳腫瘍に関しては、造影MRIは病理そのもの。
  • 髄膜腫は、頭痛の場所に一致。
  • BTの頭痛
    局在、水頭症、脳圧↑、出血
  • 早朝頭痛 教科書だけの話、実はない
  • 聴神経腫瘍Op後の頭痛。ケミカルな髄膜炎。
  • ラトケのう胞、無症状なら観察。

(4)頭頸部外傷による頭痛

  • 外傷後の頭痛は、自験例で、頭痛全体の0.5%程度。
  • もともとの頭痛もちの場合、頭頸部外傷による頭痛なのか鑑別は困難。
  • むちうち損傷による頭痛が多い
  • 持続期間3ヶ月で急性と慢性とを分ける
  • 42M、打撲。ボクシング後、翌日歩いて受診。MRIで5mmのICHとSAH。4日で改善。
  • 43M、打撲。車で追突された。後頭部痛と頸部捻挫。改善なく紹介。3週過ぎているからマッサージと痛みどめで改善。
  • 41F、後頭部痛。追突。8ヶ月で紹介。性格ナーバスに変化。SDS52点。抗うつ剤で改善。
  • 66F、SDH

(5)感染症

  • 慢性頭痛+頸部硬直→HIVやモラレ再発性髄膜炎*を考える。

*参考

良性の再発性無菌性髄膜炎。頭痛、倦怠感、髄膜刺激症候を呈し、髄液では初期に内皮細胞と多形核球の増加がみられ、その後、単核球増加に変化する。

演者からのTake home message

間中D なんにせよ患者の心配には真摯に応えよう。それがトラブルを防ぐ。
(1)米田D SAHクモ膜下出血は疑うことが大切。クリッピング後頭痛にも注目。
(2)臼田D 動脈解離、CVT、RCVSに注意しよう。43F、片頭痛でCTとった4日後に再度頭痛、CT再検でSAHだったことも。
(3)池田D 第3脳室腫瘍。突然死することあり、注意。
(4)永関D 57M、頭部打撲。翌日血腫。横静脈洞の骨折だった。
(5)飯ケ谷D 真菌性髄膜炎にも注意。ステロイド使用、糖尿病。

VI.イブニングセミナー2 群発頭痛

(1)群発頭痛CHのメカニズム

群発頭痛の特徴
おじさんが片眼で泣いているイメージ

  • 眼瞼下垂
  • 鼻閉
  • 発汗
  • ホルネル症候群
  • 同じ時間におこる
  • 片側だけ
  • アルコールで誘発

視床下部の機能異常 片頭痛とは違う

発作時の治療

  • スマトリプタン(イミグラン)皮下注 30分で90%に効果(片頭痛70%より成績がいい)タイミング遅くても効果あり。
  • アマージを1日2、3回服用
  • 100%O2
  • イミグラン点鼻薬も、正しく使えばよく効く。
  • 実際に痛い時病院に来てもらえると、とても教育的(ふつうはとても無理)。
  • 50歳以上などで、虚血性疾患あるときの治療は?(トリプタンは使用できないから)

予防

  • ワソラン
  • ステロイド 保険上、臨床的に使用が認められた。
  • 今後の課題

フロアから

  • 副交感神経の賦活だけでは説明がつかない機序、発汗・ホルネルなど。
    →交感神経とのバランスではないか?そこに視床下部関与。

(2)自己注射キットの経済性

自己注射は、「高い、怖い」というイメージ。
しかし、種々のトリプタンがきかない例には実は経済的。

  • 60M、毎年3ヶ月群発頭痛CHに悩まされる患者。イミグラン自己注+ワソラン・デパケン+ステロイドで効果。自己注5〜10分で改善。
  • 頭痛外来の3%がCHだった。
  • CH319人中、49%に自己注処方、95%の患者が再度処方を望んだ。
  • 病院で皮下注するより自己注の方が経済的(こんなオチか?)
  • 注意点
    1.最初、白い棒が出ていないことを確認、ちゃんとケースに戻せば引っ込む。
    2.6/10万ケース、針が曲がることがある。一度セットした針を使わずにケースにもどすと曲がる。やせた人が腕に打つと、骨にあたって曲がった珍しい例もある。大腿で。

フロアから

  • 経口薬が効く人もあるので、自己注だけにこだわらず。
  • 夜ねてから痛くなる人には、眠前アマージ投与も。

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